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ことばによる意志疎通は、料理を皿に盛って客に出すのに似ている


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By Dr. K. Kinoshita(木下和好): YouCanListen 開発者・同時通訳者・元NHK TV・ラジオ 英語教授

<「ことば」と皿に盛った料理の関係>

レストランで何かを注文した時、料理された物がそのままのテーブルの上に置かれることはまずない。必ず皿などに盛られた状態で運ばれて来る。皿は料理を人に提供するために欠かすことの出来ない道具となる。家庭料理でも、インスタント食品でも皆同じだ。 実は、ことばも皿に盛った料理に似ている。皿に盛った料理は文字通り「皿」と「料理(食べ物)」の2つがセットになった物だが、実はことばも2つの要素から成り立っていて、「皿」にあたる部分と「料理」に当たる部分がある。

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ことばにおいて「料理(食べ物)」に例えられる部分は、「イメージ」である。イメージは具体的には「思考・思い・発想・意志・感情・計画」などである。このイメージは、人間ひとりひとりの脳中で造り出される。でもイメージが脳内にあるだけでは、それを他の人に伝えることが出来ないので、イメージの伝達、すなわち意志疎通のための「皿的」な伝達手段が必要となる。それが音声(音声記号=音声言語)である。音声記号とは具体的に言うと、日本語とか英語とか中国語などと呼ばれる音声言語のことで、固有の音の並び方を意味する。脳内イメージがそれぞれの言語の音声記号の「皿」に乗せられ、音の響きとして空気中に放出された時、初めて意志疎通が可能となる。

[ 脳内イメージを料理に例えると ]

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 ↓   

[ 音声記号(音声言語)が皿の役割を果たす ]

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<記号としての言語>

日本語とか英語とか中国語などは、「語」が付いているので、それら自体が「ことば」と思われているが、実は記号に過ぎない。人がことばを話す時、すなわち頭に思い描くイメージを他人に伝える時、それは声帯と口の動きで「空気振動」に変換され、聞く人の鼓膜に届く。この空気振動はあくまで「波形」であり「記号」である。なぜなら空気振動自体には意味が無いからだ。空気振動は「皿」の役割を果すだけで「料理(食べ物)」すなわち「イメージ」そのものではない。イメージを脳内から外部に運び出す手段である。

この空気振動そのものには意味は無いが、聞く人の脳の中で神経パルスに変換され又「イメージ」に変換された時、初めて具体的な意味になる。もう少し詳しく説明すると、ことばを発した人の脳内のイメージ自体はそのまま脳内に残り、空中を飛んで行って直接聞く人の脳の中に入り込むのではなく、記号化された音声言語が聞く人の脳の中でイメージに変換されて初めて意志が伝わったことになる。

英語音声

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中国語音声

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日本語音声

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↓   

世界の音声言語は全て意思伝達のための記号!

<ことばはパソコンによるデータ送信に似ている>

ことばによる意志疎通は、パソコンのデータ送信と酷似している。というよりパソコンが人の脳の機能に似せて造られたと言った方が正しいかも知れない。パソコンですばらしい写真を誰かに送信する時、写真はパソコンの中で全て電子信号に変換され、有線あるいは無線で相手のパソコンに届く。送信時にコード内、あるいは空中を移動する物は電子信号であり、写真そのものではないので、電子信号を受け取っただけでは、その写真を目にすることは出来ない。でも受け取る側のパソコンにその電子信号を写真に変換するソフトがインストールされていれば、画面に写真が映し出される。あたかも写真そのものが届いたかのように。でももし受信PCに送信PCと同じ写真変換ソフトがインストールされていなければ、電子信号を写真に変換することが出来ないので、送られて来た写真は画面上に再生されない。

このように電子信号は写真そのものではないので、写真がパソコンから別のパソコンに移動することはない。電子信号はあくまでも写真(料理)を送信するための伝達手段(皿)に過ぎない

[ パソコン間の電子信号によるデーターの送信・受信 ]

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[ 送りたい写真 ]

(ことばの場合は話者の脳内イメージ)

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[ 送信PCで電子信号に変換 ]

(ことばの場合は音声記号に変換)

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[ 受信PCで電子信号を写真に変換 ]

(ことばの場合は聞き手の脳内で音声記号をイメージに変換)

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この場合の写真はお客様に提供する「料理(食べ物)」に例えることが出来、電子信号は「料理を盛る皿」に似ている。

「料理と皿」のように、あるいは「写真と電子信号」のように、ことばも「イメージ」と「音声記号」の2重構造になっていることを理解しなければ、ことばの学習方法を誤ってしまう危険性がある。何年も学習しているつもりが、実は殆んど何も学習していなかったという惨事を体験することにもなりかねない。ことばを覚えるということは、適切な料理(食べ物)を適切な皿に盛る作業のように、適切なイメージを適切な音声記号と結合させる作業を意味する。音声だけを学んでもことばを学んだことにはならない。又1つ1つのイメージに的確な音声が結合されない学びも、ことばの学習にはならない。(次回に続く)