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脳内言語(中枢言語)は万人共通。音声言語(外的言語)は多種多様

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<情報提供> Dr. K. Kinoshita(木下和好): YouCanListen 開発者・同時通訳者・元NHK TV・ラジオ 英語教授

<新しいことばを覚えることは重労働ではない>

英語、日本語、中国語などの世界中の言語は、それぞれ独立的に存在しているので、外国語を覚えるためには、母国語習得の時と同じ量の学びをする必要があると思っている人が多い。それだけの理由で、最初から英語学習を諦めてしまう人もいる。この考え方をパソコン用語で説明すると、次のようになる。

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日本語を母国語とする人の脳内の日本語容量がたとえば5テラバイト(仮想数字)だとすると、他の言語を話す人達も、ことばのレベルが同じならその言語容量も5テラバイトということになる。ことばが2重構造になっていることに気付いていない場合、当然このような発想に陥る。この考え方によると、日本語を自由に話すためには5テラバイトが必要なので、外国語を自由に話すようになるためには更に5テラバイトの情報蓄積が必要となり、語学習得はかなり困難な作業ということになる。モノリンガル、すなわち1つの言語だけ話す人は、ことばの2重構造に気付きにくいので、バイリンガルな人あるいはマルティリンガルな人を見て「神業」と思ってしまう。しかし実際は、ことばの2重構造のおかげで、他の言語習得は5テラバイトの追加作業ではなく、はるかに軽い情報蓄積で済む。

<ことばが2重構造になっていることに気付いた瞬間>

私がことばの2重構造に気付いたのは、大学生の物理の授業中だった。私は小6の後半から独学で英語を学び始めたが、中2になったころには日常会話に不自由を感じなくなった。それに目をつけたアメリカ人宣教師は、中3の時から私のために通訳準備の個人レッスンを開始し、高校1年になると英語の礼拝メッセージの通訳をさせるようになった。最初は下手だったが少しずつ慣れ、高校を卒業するころには通訳のプレッシャーが薄れて行った。

大学入学後、物理が好きだった私はためらうことなく物理を選択した。教授はアメリカ人で、それまでは外から通訳を連れて来ていた。でも私のことを聞いた教授は、それまでの通訳を断り、受講生である私に2年間も通訳させた。別に苦ではなく通訳するのが楽しかった。でもある時不思議なことに気付いた。それは通訳する前に通訳が終わっていたことだ。すなわち「英語から日本語に訳す」というプロセスが存在しないことに気付いた。通訳なのに通訳していないという不思議な現象が起こっていたのだ。私は英語の音声を聞いてはいたが、実際は英語音声がもたらす意味(イメージ)に神経を集中させていて、脳内に記憶されて行ったのは英語ではなくイメージ(意味)だった。そして教授が通訳を促すタイミングで、間髪を入れずに記憶に残っているイメージを日本語音声という媒体を使って再生させていたに過ぎなかった。この時、ことばは脳内言語(中枢言語)と音声言語(外的言語)の2重構造になっていることに気付いた。

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脳内言語(中枢言語)は、人が人として生きて行くためのあらゆる要素、すなわち理論的発想、思い、理解、概念、思考、意志、感情、入力情報の整理、記憶等の全ての精神機能・精神活動を包括している。そして人は膨大な潜在的思惟の中から他人に伝えたい具体的思い(イメージ)を音声言語(外的言語)に変換し、ことばとして話すことになる。私は更に、音声言語自体には意味がなく、一種の記号に過ぎないということもわかった。

<ことばが2重構造になっていることの証拠>

ことばは脳内言語(中枢言語)と音声記号(外的言語)の2重構造になっているが、脳内言語は脳にダメージを受けない限り失われることはない。でも音声言語は完璧に失われたり、別の音声言語に入れ替わったりすることがある。もちろん音声言語を複数所有することも可能だ。

言語が2重構造になっていることの証拠として、次のような例がある。たとえば日本人の子供が親の都合でアメリカに移住すると、9才以下であれば、ほんの2~3ヶ月で英語をほぼ完ぺきに習得してしまう。幼稚園や小学校に入学しても、ことばの壁を感じることなく友達と遊び、授業内容も十分理解する。でも英語が母国語レベルに達したとしても、10才未満(こどもによっては多少の年令のばらつきがある)の時に帰国し、英語に触れずにいると、その子供はほんの2~3ヶ月で英語を完璧に忘れ、日本語しか使えなくなってしまう。

でも英語を完璧に忘れてしまった子供は、アメリカで友達と英語で話した会話の内容や、英語で習った授業内容を忘れてしまうことはなく、日本の友達にそれらの体験や習得内容を日本語で説明することができる。もしことばが2重構造になっていなければ、英語を忘れた時、英語で習得したすべての記憶や体験も失うことになる。でも英語音声は記号に過ぎず、全てのことが脳内言語として記憶されるので、英語を忘れてしまっても記憶に関しては何の影響もない。唯一の問題は、体験談や学習した内容を日本語でしか表現できないことだ。

もう1つの興味深い例がある。当然のことながら、私は日本人とは日本語で話し、日本語を知らない人とは英語で話す。いずれにせよ話が盛り上がり、会話内容が脳裏に鮮明に刻まれることがある。何年か後に過去の会話の内容を思い出し、別の人に伝えることがある。でも過去の会話が英語で行われたのか、あるいは日本語だったのか思い出せない時がある。内容は鮮明に覚えていて、日本語でも英語でも再現できる。同じようなことを言った人が私以外に何人もいる。ことばが2重構造になっていなければ、こういう体験はあり得ない。

Woman With Doubt

内容は覚えているのに、何語で話したかは覚えていない

<外国語を覚える時の脳への追加負荷量>

ことばの2重構造がわからない人は、外国語を習得する時、5テラバイトの追加作業になると考えがちだが、実際は思ったよりずっと軽い。

世界中の全ての人が生まれた時から保有している脳内言語(中枢言語)は、体が成長するように成長して行く。言語能力の総容量がたとえば5テラバイトだった場合、脳内言語の容量は4.5テラバトで、そこに0.5テラバイトの音声言語が張り付き、全体としてとして5テラバイトになると考えるのは合理的である。もちろん数字や比率は仮想に過ぎないが、脳内言語(中枢言語)の比重が高いことだけは確かである。そして音声言語(外的言語)の容量が少ないのは、音声言語自体には意味は無く、記号に過ぎないからだ。

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以上の理由から、日本人が英語を習得する時、人類共通の脳内言語はすでに備わっているので、5テラバイトの追加作業ではなく、0.5テラバイトの追加作業となる。なので、英語を習得するのは、人が想像するよりかなり軽い作業ということになる。

<ことばの2重構造を理解すると多くの道が開かれる>

私は大学生の時にことばの2重構造に気付いたが、それがベースとなり、多くの道が開けて来た。

<1> ことばの2重構造理解は、同時通訳メカニズムを明らかにし、又技術向上に貢献する。(通訳メカニズムに関しては、別の記事で扱う)

<2> ことばの2重構造理解は、人間のコミュニケーションで生じる誤解の原因を解明し、また解決することが出来る。(別の記事で詳しく述べる)

<3> ことばの2重構造理解は、語学習得メカニズムを明らかにし、何をしたら効果的学習となるかがわかる。(YouCanListen はことばの2重構造から語学習得メカニズムを突き止め、開発されたスピーキング教材)